「広い現場を一度に測量したい。」
「木が多くてドローンが使えない現場はどうすればいい?」
「構造物の出来形だけサッと測りたいのに、準備が大がかりすぎる。」
フェーズ1〜3でICT化の土台を作ってきたら、いよいよ最終フェーズです。
フェーズ4では「点群測量」を使って、現場を丸ごと3Dデータとして記録・管理できるようになります。
この記事では、実際に導入してきた経験をもとに、点群測量の基本的な仕組みから各手法の特徴・使い分け・失敗談まで本音でお伝えします。
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点群測量とは何か
ケン(若手社員)「点群測量」って最近よく聞くんですが、どういうものですか?



現場を無数の「点」で記録する測量のことで、その点が集まって地形や構造物の形を3Dで再現できるんだ。
点群測量とは、レーザーや写真解析によって現場の形状を無数の点(点群データ)として記録する測量手法です。
数百万〜数億点のデータが集まることで、現場の地形・構造物・法面などを丸ごと3Dモデルとして再現できます。
従来の測量が「点」で地形を記録していたのに対し、点群測量は「面」で現場全体を捉えます。
この違いが、測量の精度・スピード・管理のしやすさに大きな差をもたらします。



起工測量・出来形管理・土量計算。
これが全部データで完結するようになるぞ。



「なんとなく合ってると思います」から「データで証明できます」に変わるんですね。
点群測量を実現する3つの手法
点群測量には大きく3つの手法があります。それぞれに得意・不得意があるため、現場の状況に合わせて使い分けることが重要です。
手法①:ドローン測量
ドローンを使って上空から現場を撮影・計測し、点群データを作成する手法です。
さらに「写真測量」と「LiDAR搭載型」の2種類に分かれます。
写真測量(SfM)
ドローンに搭載したカメラで地表を大量に撮影し、複数の写真を解析して3Dデータを作成します。
うちの会社ではDJIのファントムRTKというドローン測量機を導入しました。



広範囲を短時間で一気に測れるのが最大の強みだ。
従来なら数日かかる起工測量が、半日で終わることもある。



導入してみて、現場はどう変わりましたか?
導入して大きく変わったのは以下の3点です。
- ① 起工測量後も着工前の形状を確認できる
-
起工測量が終わって工事が進んだ後でも、気になったときに着工前の地形データを呼び出して現状と比較できます。
「あのとき地盤はどうなっていたか」をデータで振り返れるのは、従来の測量ではできなかったことです。 - ② 法面・盛土の出来形管理が「面」で完結する
-
巻き尺で数点を測る点管理から、面全体をデータで管理する面管理へ。
測り忘れがなくなり、工程も品質も精度が向上しました。 - ③ 発注者への説明がデータで証明できる
-
「なんとなく合っていると思います」から「データで証明できます」に変わります。
監督員からの受けも良く、信頼の積み上げにつながります。
写真測量の注意点——3回やり直した失敗談



導入してすぐ使いこなせましたか?



全然(笑)。
最初はうまくデータが取れなくて、3回測量をやり直したことがあるぞ。
写真測量では、GCP(グラウンドコントロールポイント)と呼ばれる基準点の設置が必須です。
GCPとは地上に設置する標識のようなもので、ドローンが撮影した写真データを現地の座標に変換する際の「基準」になります。
このGCPの精度が、そのままデータの精度に直結します。
また設定項目が多く、慣れるまでに時間がかかります。
「とりあえず飛ばせばいい」というわけではなく、飛行計画の設定・GCPの配置・データの取得方法まで、一つひとつ正確に行う必要があります。
最初の数回は「練習」のつもりで臨むこと。
失敗から学んで精度を上げていくのが、ドローン測量習得の近道です。
さらに、写真測量には障害物に弱いという弱点があります。
木々が生い茂っている現場では地面まで写真が届かず、地形を正確に測れないケースがあります。
背の高い木が1本あるだけで上空を飛行しなければならず、地上から遠くなることで精度が落ちることもあります。
LiDAR搭載型ドローン
レーザーを搭載したドローンで地形を計測する手法です。
レーザーが木の葉の隙間を通過して地面の形状を捉えるため、樹木が多い現場でも正確な地形データが取得できます。



じゃあ最初からLiDAR搭載型を選べばよかったんじゃないですか?



値段を聞いたら驚くぞ。
レーザーセンサー単体で1,000万円〜という世界だ。
LiDAR搭載型は写真測量に比べて圧倒的に高額です。
中小企業がいきなり導入するにはハードルが高く、まずは写真測量から始めるのが現実的な選択肢です。
データ処理ソフト「Pix4D」について



うちでは国際航業のPix4Dというソフトでデータを処理している。
何度か使えばスムーズに作れるようになるぞ。



使っていて困ったことはありましたか?
一つ注意点があります。
使い方やトラブルシューティングをインターネットで検索しても、英語版の情報しか出てこないことが多いです。
日本語の情報が少ない点は、導入前に知っておくべきことです。
Pix4Dの具体的な使い方については、いつかこのブログでも詳しく紹介したいと思っています。
飛行前に必ず確認すること



ドローンを飛ばす前に、まず飛行可能なエリアかどうかを確認することが絶対だ。



申請が必要な場合はどうすればいいですか?
申請が必要な場合は早めに手続きを進めることが鉄則です。
申請には時間がかかるため、工程に影響が出ないよう現場が決まった段階で早めに動き出しましょう。
手法②:地上型レーザースキャナー(TLS)
三脚に固定して使う据え置き型のレーザースキャナーです。
同じ場所から360度にレーザーを照射して、周囲の地形・構造物を高精度にスキャンします。



3つの手法の中で精度が一番高い。
ドローンが飛べない場所でも使えるのが強みだ。



デメリットはありますか?
機械の位置から360度の範囲しか計測できないため、広い現場では設置場所を複数回変えながら計測する必要があります。
また導入費用が3つの手法の中で最も高額なため、導入前にしっかりとコストの検討が必要です。
精度が最優先される現場・ドローンが飛行できない場所。
こういった現場でTLSは最も頼りになる存在です。
現在メーカーを検討中で、近々導入予定です。
導入後はこのブログでもレポートします。
手法③:ハンディスキャナー
手持ちで歩きながらスキャンできる、最も取り回しのしやすい手法です。
歩くだけでリアルタイムに点群データが取得でき、後処理が不要でそのままデータを活用できます。
私の会社ではCHCNAV RS10というハンディ型3Dレーザースキャナーを導入しました。
ハンディスキャナーを導入した理由



ドローン測量を導入したのに、さらにハンディスキャナーも必要なんですか?



ドローンの写真測量は木が障害になって地形を測れない場面があるんだ。
地上から測れる機材が必要だと感じた。
地上型レーザースキャナーでも解決できますが、導入費用が高額です。
まずは比較的安価で取り回しのしやすいハンディスキャナーから始めるという判断でした。
ハンディスキャナーが活躍する場面



一番使うのは構造物の出来形測量だな。
ピンポイントで素早く測りたいときに本当に重宝するぞ。



ドローンとの使い分けはどうしていますか?
ドローンや地上型レーザースキャナーは広範囲を一度に測量できますが、構造物の出来形だけをピンポイントで計測したいという場面では逆に大がかりすぎます。
ハンディスキャナーなら準備・荷物・計測時間・データ処理時間のすべてが少なく済みます。
盛土の量確認、構造物が設計通りかの確認、こういった場面でハンディスキャナーは最速の選択肢です。
ハンディスキャナーの注意点
得意・不得意があります。法面などの平坦な面の計測には不向きです。
ハンディスキャナーはSLAM技術(周囲の特徴を認識して位置を把握する仕組み)を使っているため、特徴の少ない平坦な面では精度が落ちやすくなります。
また広範囲の現場にも不向きです。
ハンディスキャナーは「万能」ではなく「特定の場面で最速」の道具です。
得意・不得意を把握したうえで使い分けることが大切です。
3つの手法、現場による使い分け



一つの道具で全部解決するんじゃない。
現場の状況を見て最適な手法を選ぶ判断力が、監督の腕の見せどころだぞ。



道具を使い分けられて初めて、本当のICT化ですね。
| 手法 | 向いている現場 | 注意点 | 導入コスト |
|---|---|---|---|
| ドローン(写真測量) | 広範囲・起伏が多い地形・飛行制限がない場所 | 障害物に弱い・GCPの精度が重要・設定項目が多い | 中 |
| ドローン(LiDAR搭載) | 樹木が多い現場・写真測量では取れない地形 | 非常に高額(レーザー単体1,000万円〜) | 非常に高 |
| 地上型TLS | ドローンが飛行できない場所・精度最優先の現場 | 広範囲では設置を複数回行う必要あり | 高 |
| ハンディスキャナー | 盛土の量確認・構造物の出来形・ピンポイント測量 | 広範囲・平坦な法面には不向き | 低 |
導入する順番はスモールスタートで



まずはドローン写真測量かハンディスキャナーから始めるのがおすすめだ。
コストを抑えながら点群測量の感覚が掴める。



外注している会社も多い中、自社導入はハードルが高くないですか?
外注している会社も多い中、自社で導入するのはハードルが高く感じるかもしれません。
ですが杭ナビやICT建機と同じで、導入してみると意外と使いやすく、業務効率化の効果は想像以上に大きいです。
まずは写真測量またはハンディスキャナーから始めて、現場での活用に慣れてからTLSやLiDAR搭載ドローンの導入を検討する。
この順番がフェーズ4においてもスモールスタートの鉄則です。
まとめ:フェーズ4まで来たら、現場の完全ICT化が実現する



フェーズ1から積み上げてきて、ここまで来るとどんな景色が見えますか?



現場のすべてがデータになる。
それだけで、仕事の質が根本から変わるぞ。
フェーズ1の杭ナビから始まり、フェーズ4の点群測量まで、この道のりを一歩ずつ積み上げてきた会社だけが、現場の完全ICT化という景色を見ることができます。
今回のポイントをおさらいします。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 点群測量とは | 無数の点で現場を3D記録する測量手法 |
| ドローン写真測量 | 広範囲・低コスト・GCPの精度が重要・障害物に弱い |
| LiDAR搭載ドローン | 樹木対応・高精度・レーザー単体1,000万円〜 |
| 地上型TLS | 最高精度・ドローン不可の場所に強い・高額 |
| ハンディスキャナー | 手軽・ピンポイント最速・平坦地や広範囲に不向き |
| 導入の順番 | まず写真測量またはハンディスキャナーから始める |
「うちには関係ない」と思っていたICT化が、気づけば現場の当たり前になっている。
それがこのロードマップの目指すゴールです。
迷っているなら、まず一歩踏み出してみてください。








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