「丁張を設置する手間をなくしたい。」 「オペレーター1人で高さ管理まで完結させたい。」
フェーズ1・2でデジタル測量の感覚を掴んだら、次はいよいよ重機をICT化するフェーズです。
ここまで来ると、現場の動き方が根本から変わります。
丁張設置の手間がなくなり、必要な人員も減り、施工スピードが一気に上がりました。
この記事では、実際に杭ナビショベルとGNSS建機を導入してきた経験をもとに、それぞれのメリット・デメリット・現場での使い分けまで、本音でお伝えします。
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まず「杭ナビショベル」から始めた理由
ケン(若手社員)フェーズ3では何から導入したんですか?



まず杭ナビショベルから始めた。
その後にGNSS建機も導入したぞ。
最初に杭ナビショベルを選んだ理由は3つありました。
- すでに杭ナビに使い慣れていた
-
フェーズ1で杭ナビを導入して現場に浸透していたため、同じシステムの延長線上として受け入れやすかったです。
- 既存の重機に後付けできる
-
新しい重機を購入する必要がなく、すでに持っている重機にセンサーを取り付けるだけで導入できます。
初期費用がGNSS建機と比べて安く抑えられました。
- 買い切りでランニングコストがかからない
-
サブスクリプションや通信費が発生しない点も、中小企業にとっては大きな魅力です。



初期費用とランニングコスト、両方を考えて選んだんですね。



そうだ。
まず試してみるなら、コストが抑えられる方から始めるのが鉄則だぞ。
杭ナビショベルで何が変わったか



実際に使ってみて、一番変わったことは何ですか?



丁張の設置と、手元で作業員が床掘の高さを確認する必要がなくなったことだ。
従来の施工では、丁張を設置して作業員が高さを確認しながらオペレーターに指示を出す——この連携が必要でした。
杭ナビショベルを導入してからは、オペレーターがキャビン内のモニターで直接高さをリアルタイム確認しながら施工できるようになりました。
これによって作業のスピードが上がり、さらに必要な人員が減ったのが最大の変化です。
限られた労働力で現場を回す中小企業にとって、これは本当に大きなメリットでした。
杭ナビショベルの注意点



デメリットや注意点はありましたか?



正直に言うと、いくつかある。
知っておくと現場でハマらずに済むぞ。
注意点①:作業前に杭ナビの設置が必要
杭ナビショベルは、重機のキャビン上に取り付けたプリズムを杭ナビが追尾することで位置・高さを割り出す仕組みです。
そのため、作業前に毎回杭ナビを設置する必要があります。
設置自体はそこまで難しくありませんが、職人さんを待たせてしまうことがあります。
段取りの中に「設置時間」を組み込んでおくことが大切です。
注意点②:重機の旋回方向によって杭ナビが見失うことがある
重機が旋回したとき、アームがプリズムとの視線を遮ってしまい、杭ナビが追尾を見失うことがあります。



だから設置前にオペレーターと旋回方向を打ち合わせして、杭ナビの位置を決めるのが鉄則だ。



事前の打ち合わせが精度に直結するんですね。
注意点③:縦長の現場では基準点が多く必要になる
前後左右に広い現場であれば杭ナビの設置位置の選択肢が多いですが、縦に細長い現場では設置位置が限られます。
また基本的に後方交会法での器械設置になるため、細長い現場では基準点をたくさん作る必要があります。
現場の形状に合わせた測量計画が重要です。
縦長の現場では早めに基準点の計画を立てておくと、当日の段取りがスムーズになります。
その後導入したGNSS建機——杭ナビショベルとの違い



GNSS建機はどう違うんですか?



一言で言うと「どこでも・どの方向でも使える」のが強みだ。
GNSS建機は衛星から位置情報を受信して、重機の刃先の位置・高さをリアルタイムで表示します。
杭ナビショベルのように事前に器械を設置する必要がなく、重機を起動するだけで自動的にGNSSを受信して使えるのが最大の違いです。
GNSS建機のメリット
起動するだけで使える 設置作業が不要で、スイッチを入れればすぐに位置・高さの表示が始まります。段取りの時間が大幅に短縮されます。
どこへ行っても・どの方向に旋回しても使える GNSSが受信できる範囲であれば、移動や旋回に関係なく常に位置・高さを表示し続けます。杭ナビショベルのような「アームが遮る」問題が発生しません。
GNSS建機のデメリット
ランニングコストがかかる 通信費などのランニングコストが継続的に発生します。長期的な費用を考えておく必要があります。
数値が常にぶれる GNSSで受信しているため、バケットが止まっていても床掘の高さが数cm単位で常にぶれます。杭ナビショベルはバケット停止時にほとんど数字が動かないため、この点は杭ナビショベルに軍配が上がります。
障害物があると受信しない 木の下・橋の下など重機の上に障害物があると、GNSSが受信できなくなります。現場環境によっては使えない場面もあります。
精度は杭ナビショベルより劣る 総合的な測位精度は杭ナビショベルの方が高いです。精度を重視する場面では杭ナビショベルの方が向いています。
【GNSS建機を使う前に必須】ローカライゼーションとは?



GNSS建機って、買えばすぐ使えるんですか?



使う前に必ずやらないといけない作業がある。
「ローカライゼーション」だ。
GNSS建機を現場で使う前に、必ずローカライゼーションという作業が必要です。
これを知らずに導入すると「使えない」という事態になるので、事前にしっかり理解しておきましょう。
ローカライゼーションとは何か
GNSSは衛星から位置情報を受信しますが、その座標は「緯度・経度・楕円体高」で表されます。
一方、工事現場で使う座標はすべて「平面直角座標(X・Y・Z)」で表されています。
この2つの座標系のズレを修正する作業がローカライゼーションです。
簡単に言うと、「衛星が示す座標」を「現場の工事座標」に変換する——この作業を施工前に行うことで、GNSS建機が正しい位置・高さを示せるようになります。
ローカライゼーションの流れ
① 基準局の設置 現場に基準局(固定局)を設けます。基準局があることで、GNSS建機に搭載した受信機がリアルタイムで位置情報を計測できるようになります。
② 基準点の計測 GNSSローバー(移動局)を使って、現場内の基準点を計測します。高さも含めた3次元座標で計測し、ICT施工の対象範囲を囲むように最低4点、通常5〜7点を観測します。基準点の内側にしかローカライゼーションできないため、施工範囲をすべて囲むことが重要です。
③ 現地座標への変換 観測した基準点データを使って座標変換値を作成します。これを設定しておくことで、以降のGNSS計測値がリアルタイムで現地座標に変換されます。



このローカライゼーションの精度が、そのままICT施工の精度に直結するぞ。
最初の作業が一番大事なんだ。



手を抜けない作業なんですね。
ローカライゼーションに必要な機材と費用



ローカライゼーションって、GNSS建機だけあればできるんですか?



できない。
GNSSローバーなど、別途ローカライゼーション用の機材が必要になるぞ。
GNSS建機本体とは別に、GNSSローバーなどの機材が必要になります。
当然、この機材にも初期費用とランニングコストがかかります。
GNSS建機の導入を検討する際は、本体の費用だけでなく、ローカライゼーション用機材のコストも含めてトータルで計算することが重要です。
杭ナビショベルとGNSS建機——ローカライゼーションの有無が大きな違い
ここで、両者のローカライゼーションに関する違いを整理しておきます。
| 項目 | 杭ナビショベル | GNSS建機 |
|---|---|---|
| ローカライゼーション | 不要 | 必須 |
| 使用開始までの手順 | 現地座標があれば杭ナビを設置してすぐ使える | ローカライゼーション完了後に使用可能 |
| 重機が増えた場合 | 増えた台数分だけ杭ナビの設置が必要 | 最初のローカライゼーションデータを入れるだけですぐ使える |
| 毎回の準備 | 毎回杭ナビを設置する必要あり | エンジンを起動するだけでOK |



杭ナビショベルはローカライゼーション不要で、現地の座標さえあればすぐ使えるのが強みだ。
ただし複数台使う場合は、その台数分だけ杭ナビを設置しないといけない。



GNSS建機は最初にローカライゼーションをやれば、後から重機が増えてもデータを入れるだけですぐ使えるんですね。
最初の手間はGNSS建機の方がかかる。でも一度セットアップすれば、台数が増えても運用がシンプル——この特性を理解したうえで、自社の現場規模や運用方法に合わせて選ぶことが大切です。
ローカライゼーション用機材の費用も含めてトータルコストを試算してから導入を検討しましょう。
「GNSS建機本体だけ買えば使える」と思っていると、後から想定外のコストが発生します。
杭ナビショベルとGNSS建機、現場による使い分け



結局どっちを使えばいいんですか?



現場の形状と工種によって使い分けるのが正解だ。
| 比較項目 | 杭ナビショベル | GNSS建機 |
|---|---|---|
| 導入コスト | 比較的安い | 高め |
| ランニングコスト | なし(買い切り) | あり(通信費等) |
| 設置の手間 | 毎回必要 | 不要(起動するだけ) |
| 精度 | 高い | やや劣る |
| 旋回・移動の制約 | あり(視線が遮られる) | なし |
| 障害物の影響 | なし | あり(受信できない) |
| 向いている現場 | 精度重視・広い現場 | 細長い現場・移動が多い現場 |
私の会社では水道工事・下水道工事など縦に細長い現場ではGNSS建機を使って床掘することが多いです。
細長い現場は杭ナビの設置位置が限られるため、GNSSの「どこでも使える」強みが活きます。
また、0.2㎥級・0.25㎥級・0.45㎥級・0.7㎥級とICT建機を複数保有しているため、複数現場が同時進行する場合はその現場に応じたサイズの建機を配置して使用しています。
ICT建機の所持台数には上限があるので、どの現場にどの建機を入れるかの判断も監督の重要な仕事です。
フェーズ3導入を迷っている方へ



フェーズ3って、やっぱりハードルが高いですか?



杭ナビを持っているなら、まず杭ナビショベルから始めてみることをおすすめする。
杭ナビショベルは、すでに杭ナビを導入している会社なら初期費用が比較的安く、ランニングコストもかからないため導入しやすい選択肢です。
フェーズ1で杭ナビに慣れた現場なら、操作感も近いためスムーズに受け入れてもらえます。



GNSS建機はその次でいい。
まず丁張レス施工の感覚を杭ナビショベルで掴んでから、次のステップとして検討するのが現実的だぞ。



順番通りに進めることが、遠回りのようで一番の近道なんですね。
まとめ:フェーズ3で現場の「人の動き」が変わる
フェーズ3まで来ると、丁張設置・手元での高さ確認・オペレーターへの指示——これらの作業が大幅に削減されます。必要人員が減り、施工スピードが上がり、限られた労働力でより多くの現場をこなせるようになる。
これがフェーズ3の本質的な価値です。
今回のポイントをおさらいします。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 最初の一手 | 杭ナビ所持済みなら杭ナビショベルから始める |
| 杭ナビショベルの強み | 低コスト・高精度・買い切り |
| 杭ナビショベルの注意点 | 設置が必要・旋回方向の打ち合わせ・縦長現場は基準点が多く必要 |
| GNSS建機の強み | 起動するだけ・旋回自由・移動制約なし |
| GNSS建機の注意点 | ランニングコスト・数値のぶれ・障害物で受信不可 |
| 使い分けの基準 | 細長い現場→GNSS、精度重視→杭ナビショベル |
次回はフェーズ4「ドローン・地上型レーザースキャナーを使った起工・出来形測量」について詳しく解説します。
引き続きチェックしてみてください!







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